窮屈

窮屈(掌編)

上がれば下がり、下がれば上がる。
なぜ世界は、そうできているのだろう。

現実を見れば、たしかにそうなっている。
でも、なぜそうなっているのだろうか。

その答えを探すために、上がることも下がることもない世界を想像する。

気温が25度のまま変化しない世界。

暑いも寒いもなく、色も匂いも、何ひとつ移ろわない。

何もかもが均一な世界は、穏やかではある。
けれど、それは幸せな世界だろうか。

変化のある世界にいる私たちが、その世界を覗き見たとき、
そこには穏やかさよりも、窮屈さを感じるかもしれない。

何も起こらないこと。
変化しないこと。
それは一見、楽に見えて、やがて窮屈という感覚に埋め尽くされていく。

何も起こらない世界は、窮屈だ。

その窮屈さから抜け出すために、人は寝返りを打ち、足を組み替え、大きく伸びをする。
じっとしたままではいられず、少しでも違う形になろうとする。

それが変化の始まりであり、ひょっとすると、この宇宙の始まりもそうだったのかもしれない。

上がれば下がり、下がれば上がる。

それは、窮屈さから抜け出すための動きなのだろう。
自らを縛らないために、自らが生み出した知恵なのかもしれない。

けれど、その動きさえも、変化しているようで、ただ繰り返しているだけだと感じたなら、それもまた変えていかなければならない。

寝返りばかりでは窮屈で、足の組み替えばかりでも窮屈で、変化ばかりでも窮屈なのだ。

同じことは窮屈だからこそ、上げたら下げ、下げたら上げる。
変化し続ければ変化を嫌い、何も起こらなければ変化を望む。
それは誰かに決められたものではなく、自らが窮屈にならないために選び取っている方法なのかもしれない。

そう思ったとき、私は上げ下げを考え続ける窮屈さから、少し解放された。

さて、今度は何に窮屈を感じるだろう。

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